Swords and Bows

剣と弓の物語 --Swards and Bows

--西洋編2<弓と槍>--

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☆剣と弓の物語、ですが、槍、棍棒、メイスなど他の武器もあつかいます.



☆槍という武器

 剣を鋳造する技術がない時代、棒きれの先に黒曜石のナイフをつけた 槍(ショートスピア)は簡単に作れて実用的な武器でした。 弓よりも剣よりも、槍は古い武器なのです。

 槍はなんといっても射程の長さが魅力。マケドニアの長槍は6mも ありました。自分の身を危険にさらすことなく、相手を ブスりとやれます。たとえクラウドやスコールが剣をブンブン振り回そうとも、 ロングスピアをつきだせば(彼らの剣でポールを切断される前に...ですが^^;) あなたの勝ち!となるはずです。
また、馬上から地上の敵(あるいは逆)を攻撃できます。 そしてブレード(刃)部分が小さいので、製造が楽で安価、重さは軽く扱い易い。 剣対剣の接近戦にくらべ、個人の技術の差がでないのでやはり初心者むきかも.....

 何やらいい点ばかりみたいですが、槍は欠点も大きい。まず刃が先っぽにしかないので、 射程内にふみこまれたら防御すらできず、一巻の終わり。ポール部分が木なので 剣で切断されてしまい、両手剣と違い盾がわりにならない。また「突く」という 攻撃だけなのでワンパターン、相手に完全によまれ、 防御されやすくなります(これはスピアのみですが)。
 また、射程の長さからくる、ずうたいのでかさが実際は一番の問題。剣みたいに かっこよく携帯なんかできませんし、遠征で行軍のさいもきわめてじゃまであります。 急に敵にねらわれても剣なら腰や肩から さっとひきぬき応戦できますが、槍の場合....たてかけてある部屋のスミまで とりにいかないと!ハハハハ、ヒーローやヒロイン用にはむきませんネ。

 えー以上は、現実のお話。RPGではもっと便利ですよね。 なんたって妖精や天使、ムササビ(?) といった有翼の種族が多数存在してますので、彼らがスピアをもって空中から 攻撃すれば、下でブンブン剣をふりまわしたって届きませんからね。落下すること以外には、 弓や手裏剣みたいな飛び道具くらいでしょうかね、気をつけた方がいいのは。 弓も空中の人にはなかなか当たらないし...。

 さて槍は大きく2つの部分に分かれます。先の刃の部分と、木製の胴体部分です。 邦語訳がないみたいなので、ここでは原語のスピアヘッド(あるいはスピアポイント、 ハルバートの場合はブレード)とポール(胴体)という言葉を使うことにしますね。



←槍の先端部分。スピアヘッド。

☆ショートスピア(1.2m)

 基本的に槍は、スピアポイントは本体から取り外しがきくものとして 作られています。ショートもロングも、ポールをつけかえれば使い分けられます。 剣はこうはいかないですから、利点といえば利点?

 最も初期の槍で、また中世までヨーロッパの戦闘で使われました。 とても軽く軽快に動かせ、また刀のように使う者の技術をそれほど 必要としないため、初心者にいいようです。肩越しにかまえて、 相手の目などをねらってついたようです。
 またはその構えのまま「投げる」という用法があります。あたれば鎧も兜も 突き抜け、ロングボウ以上のすごい威力です。投げたあと、攻め込んでまた 拾って使おうと思えば使えたようですね。やり投げが現在もオリンピック 種目であるのは、ヨーロッパでは重要な戦法だったからでしょう。

☆ロングスピア(2m以上)

 長い槍というと美濃のマムシ斉藤道三。「国取り物語」では良い役ですが、 実際は恐ろしい拷問や処刑を行った本物の悪党です。えーと関係ありません でした(^^;)。さて、長い槍は肩越しにかまえたら前後にフラフラ、 まるっきし実用になりません。両手でしっかりもち、さらに胴体でささえるため 腰の位置にかまえるのが普通です。馬上の敵にも攻撃できますし、とにかく自分の 身は安全という位置で戦えるのがいい点でしょう。
 しかしこのロングスピアは最初に述べた槍の欠点が顕著にでる武器で、 次第に使われなくなったようです。そこかわりに増えていったのが、次の ハルバード。筆者おすすめの(^^;)、幻水2ローレライの死に神の鎌です。
 

☆ハルバード

 ハルバードは槍に鎌をつけたしたような武器。これも中世からルネサンス北欧で 使われた本物をモデルにしました。中国でも同じタイプのものがあり、 戟(げき)とよばれていました。

 突くだけだった槍に薄いアックス(斧)を組み合わせたため、重量が軽い利点 はそのままに多彩な攻撃ができるようになりました。斧のように打ち下ろす だけじゃなくてくるりと回転させれば、昆みたいでなんかつよそー... ポール部分に金属をあてて強化すれば切断もされないでしょ。 中世の十字軍がせめてきたから、市民も何かもって戦えーっていわれたら、 名手と対戦したらひとたまりもない剣ではなく、アタシはこのハルバートを 使わせていただきます。



☆刀、弓、槍以外の武器

フレイル

 シングルボール・フレイル。モデルは展覧会で来日した16世紀ドイツ産の 本物のフレイル。普通はボールに鉄鋲がついてトゲトゲしている。 RPGででてくるモーニングスターというのがそれ。ボールが2つついてる ダブルボールフレイルもある。
 この絵のフレイルは、グリップ部分だけ木製、あとは真鍮?か鉄か、 金属でできていました。


ワー・ハンマー

 みたとこ、普通のトンカチ。どうみてもトンカチ。でもこれは 15世紀北欧のれっきとした戦争用の武器ワーハンマーの 本物をトレースした絵なのであります。木製グリップにハンマー部を つけたようなかっこうです。




☆弓という武器☆

 洋弓、それは私の愛する武器(^^;).洋弓の歴史は古く、狩りで生活をしていた 先史時代から使われていました.特にオリエントでは,騎馬で弓を射るのが主な戦闘 スタイルで、振り向きざまに弓をいる騎馬兵の図柄「パルティアン・ショット」は 有名です.砂漠や草原といった、広大なる原野を駆け抜けるオリエントの戦いに、 弓は適した武器でした。メソポタミア、エジプト、イラン地方ともに、 かくれる森もガケも谷もないので、まる見えの戦いとなり、遠方から弓でゆうゆう攻撃が できたわけです。メソポタミア文明初期から祭られてきた彼らの戦いの女神・ イシュタル(イシュタルは愛の女神として知られるが、現地では戦いの女神の部分 が圧倒的に強い)は、矢筒を背負い弓をひくポーズで描かれます。イシュタルは けして剣をもちません。(たまに鎌をもちますけど)

 しかしギリシャ、エーゲ文明の戦争では,弓はあまり出番がありませんでした. 遠方から打っても、森に、石灰岩の切り立ったガケに、はばまれてしまう。 エーゲ海の都市での戦闘は、 小回りのきく歩兵による接近戦、あるいは船で乗り付けての接近戦で、 剣と盾の戦いだったのです。森が多く草原は少ないヨーロッパも似たような 状況だったようです。

 しかし その軽快なエーゲ周辺諸国の戦争も、5世紀になると様変わりします。 縦横に四角く並ぶ重装歩兵の時代になるのです....が、まだ全然弓の 時代にはなりません(^^;)。

  →詳しくは◆重装歩兵の時代

 さて、ヨーロッパにおける弓は、オリエントの戦神イシュタルの弓や、日本の 神への奉納としての弓と、大きく異なり、遠方からねらうひきょうものの武器...
 しかし、自分の身を危険にさらさずとも攻撃を行える弓の利点は魅力的 だったようで、 森の多いヨーロッパに適した弓も改良されて誕生しました。今もボウガンとして残る、 クロスボウ--「ウィルアム・テルの弓」がそれです。

 そうそう、弓の出番は戦場だけではありません。ゼッタイに接近戦が無理な相手、 野生動物を食用に狩る狩猟では、弓以外はまるで役にたちませんので、 鉄砲登場まで世界中で使われました。これがショートボウ。森の弓ですね。
 ヨーロッパの森の弓は、オリエントの騎馬の弓と本質的に異なります。矢をつがえる 位置、引き方、etc.詳しくは2章で解説します。

 さて、ルネッサンスの15世紀。既存の硬く不自然な概念が、 次つぎとうちやぶられていった時代。 オリエントとはまったく違う、 ヨーロッパの長弓、イングリッシュ・ロングボウが ハデに登場します。アーチェリーの元、立射の弓です。

----1415年,イギリスとフランスの100年戦争の後半、 英ヘンリー5世が休戦を破ってフランスに攻め込み, アジャンクールの戦いにおいて、ロングボウを 使用して、わずか9千の兵、それも歩兵で、3万?の フランス軍を破ったからです.

 このアジャンクールの弓が、イングリッシュ・ロングボウ,「ロビン・フッドの弓」 と呼ばれるものです.ロングボウが戦争で威力を発揮したのは、連射能力です。 慣れている兵士だと1分間に10本の矢を射たとか。また見かけによらず威力は絶大で、 単純な木製の弓ですが、堅い鎧をいとも簡単に突き破り、 フランス軍に大きな損害を与えました.
 大型剣をふりおろしても破れないヨロイをつき破る矢.これは大げさではなく、 強力な張力を使って加速する矢の運動エネルギーってすごいんです. それが小さい面積に圧縮されてぶつかるから、けっこう簡単に鉄板などは破れます. ルカ・ブライトのあのゴージャスなヨロイを矢が突き破る場面,ワー・ボウの 威力がわかるでしょ.

 そして、この長弓の射程は250m!に達したといわれます。 フランスは弓隊は少数、ついでに石弓ですから、 英国軍まで届きません(^^;)。このアジャンクール戦の勝因は長弓の 連射だといわれていますが、私は射程の違いだと思う(^^;;)。250mはすごい。すごすぎる。
 剣を交わせること もできず、フランス軍は大敗しました。

 その後もフランスは同様の戦法で負け続けますが、100年戦争は 終始押しに押されていたフランスが最後は勝つという、よく 知られた結末になりますよね。
 そう、1428年、16歳の少女ジャンヌ(ジャンヌ・ダルクは便宜上つけられた名で、 名字は不明。) が彗星のごとく現れ、一転ジャンヌが加わったフランス軍(王太子派)の 連戦連勝となります。神のお告げをきくという白き処女、 ジャンヌ・ラ・ピュセル。彼女は常に最前線で指揮していたといいます。

 ジャンヌはどうやって長弓隊を封じたのか。ジャンヌの得意とした戦法は、 夜襲。地形を見定め、たっぷり準備しての真昼の決戦にこそ、 威力を発揮する長弓も、奇襲にはまったく無力なのです。
 夜襲はひきょうでしょうか。いいえ、100年戦争はイギリスの侵略戦争。 この時の内乱のフランスで、ひきょうもへったくれもないでしょう。 おみごとです。
 大砲をもちこんで脅しに使ったり(この時の大砲は実用にならない)、 ジャンヌは奇策で局面の打開を図ったようです。

 100年戦争時代は、中世の牧歌的戦争の時代。ペストの蔓延、国王派 とブルゴーニュ派による内戦、そしてイギリスとの100年戦争、魔女狩り。
 30年戦争時代のドイツと並び、地獄のようだったと文学作品に記される このときのフランスといえど、近代の戦争---兵士も子ども達も区別なく 犠牲となる、人が肉片となり、生きながら焼かれる、生き残った者にも、 時間をかけて死に至らしめる数々の禍が襲う、こんな今の戦争とは異なるもの だったことでしょう。

 ジャンヌはパリ奪取を目前に、イギリスの捕虜となり19歳で火刑に処され、 その後、イギリス軍はまた盛りかえてしてしまいます。しかし1445年、 イギリスと結んでいたブルゴーニュ公が、フランス王シャルル7世に寝返るという、 そんじゃアンタ、今までの40年間は何だったのよ的な事体が生じ、統一された フランスを前に、イギリス軍は本土まで追い返されます。
 1450年、フォルミの戦いで100年戦争はようやく終結します。

 ...なんか話がわきにそれてしまいましたが、イギリスの長弓は、 16世紀に 鉄砲が登場するまでの短い間、戦場という舞台において ヨーロッパを震撼させたのでした。 16世紀以降、長弓は急速に使われなくなりますが、 英ヘンリー8世がスポーツとして復帰させ、現在にいたります。



☆クロスボウ

 オリエントのショートボウよりさらに小さく 威力の大きいクロスボウ(ボウガン)は、火薬と同じく中国で発明され、 ヨーロッパで発達しました。
 13世紀のスイス独立の指導者ヴィルヘルム・テルが,リンゴを 射るのに使ったのはクロスボウです.スイスでテルの像をみると、クロスボウを かかえている姿をしていますよ。
 クロスボウを使ったかどうかわかりませんが、スイス人は 中世から近世までのヨーロッパで、おそらく最強の傭兵として知られて いました。フランス革命でも、王軍、革命軍、両方から雇われていたそうです。

 クロスボウで何がたいへんかといったら、弓をひっぱって引き金の上に のせること.小さいもので強力な張力ではらないと、よく飛ばないんですね. 手ではあまり強くひけないので、クランクなどがついていて,それできりきりと 弓を引き上げるものが多かったようです.

 戦いの最中にのんびりクランク回してていいのか?そりゃよくないでしょう。 次項目であげるロングボウ以上に強力なクロスボウも、自らが安全な場所にいてゆっくり 射る場合以外は、火縄銃じゃないけど玉ごめ時間がかかりすぎ、 いまいちだったようです。
 手で矢をつがえれば早いって?実物でやってみたまえ。不可能じゃ(^^;)。

☆ロングボウ

 さて14世紀のロビン・フッドの弓--ロング・ボウはどうなったのでしょう. 狩猟の弓から発展したヨーロッパ独自の立射の弓、 長弓が戦争で大きくとりあげられたのは、前述のとおり、 ドーバー海峡をはさんで 14世紀から15世紀に行われた100年戦争の後半戦においてでした。

 ところでロングボウとショートボウは、どう区別するのでしょう? えー武器百科事典によれば、ただ「長さ」だけのようです。 ロングボウは1m50cm以上。ショートボウは1m以下。中間の サイズはなく、見た目ではっきりわかるみたいですね。

 16世紀に鉄砲が登場すると、さすがに弓を戦場で使うことは あまりなくなりました.その後,イギリスのヘンリー8世がスポーツと して採用してから復活し、近代は武器ではなくスポーツとして広まっています. 今はアーチェリーという、あれです.



☆アーチェリーと弓道

←☆アーチェリーの正しい構え....のつもりで描いたんだけど、 もっと右腕を後ろに引いたほうがいいなあ。
(モデル:幻水1のクレオさん.(C)KONAMI 1995,1998)
一番のポイントは、弓を持つ左腕と体、そして右腕が矢と平行になっていること。 目標を見るのは顔だけなのです。

☆矢を正しく射るのに必要なのは?右手の腕力ではなく、弓を支える左手の 腕力なのです。リリースの振動で弓がぶれること、これが目標をはずす第一の原因。 それを修正するのがスタビライザー。これがついてるのは高価な弓(^^;)。

☆矢は弦をあごの下にひいてそこでつがえると、一直線上に目と矢、サイトにターゲット が並びます。これが1つの流儀。もう1つはよくあるように右の頬にぴたりとつけて 矢をつがえるもの。その方が力が入るので引きやすい。(私は前者でやりました。)

☆胸当てはあった方がいい。男性もつけています。アームガードはなくても困りは しないけど....疲れてきて腕を返すのを忘れると、弦でバッチーンとはじかれ、 痛いのなんの。2,3発くらうと、もう弓ひく気しません(^^;)。


 弓は日本にもあります.1つは、戦国時代の合戦で,実際に使われて育ってきた 戦闘のための弓です.
 源平などの、合戦の絵巻をみてもわかるように、山のように矢が描かれて います。戦争では明らかに、剣ではなく弓が主力の武器でした。日本の弓道の多くの 流派も、戦いの弓・武射系の日置流からわかれたもののようです。
 もう1つ、神事・礼を学ぶものとしての弓があり、小笠原流が 有名です。やぶさめも、この系統。

 現在は弓道は、武道でありスポーツになっています.
 弓道のいいとこ、それはあのカッコイイ袴姿,そして精神的なものも重視 される武道である点ではないでしょうか.これはお気軽なアーチェリーとは 対照的で、あこがれちゃうのです.弓道は的に当てることより、形をきちんと 行うことの方が重視されています。

 和弓は射法八節という、8つの動作で1射になります。 そのうちフルドローの状態を「会」といいます。ここでアーチェリーと 違うのは、弓が大きいので頭のはるか後ろまで引き手をもってきて いるということ。また、弓の下の方をもつので、弓のにぎりより上は やや前にしなるのです。
 神社への奉納など、片腕をぬいでの射礼をよくみかけますが、 あれは作法だからみたい。右図のように、タスキでそでをくくれば、 充分打てマス。

 さてアーチェリーと弓道の大きな違いは,サイト(照準)のあるなしだと 思います.
 普通、弓は的の距離によって、向ける方向が大きく違ってきます. また個人の腕力やくせ、弓の弦の強さ(15kg-40kgくらいかな)によっても, 矢の位置と向きは異なるのです.アーチェリーのサイトは、 個人差や距離によって場所をかえてつけるため、応用力が高く、慣れてくれば どんな距離の的でもまずはずすことはありません.うまい人だと,最長の90m でもほとんど的の中心に矢が集まるのです.
 アーチェリーの特徴、それは「使用方法さえ知っていれば,的をはずす ことがありえない」ほど命中率が高いことだと思います.

 ◆日本ボーイスカウト 豊中第20団
アーチェリー初体験!のページがとってもナイス。30mの模範演技で、 的に当たったからって、拍手されるんだもん! きゃわゆーい。 でもすぐにわかるよ、だれでも当たるんだって!

 それに対し弓道の弓は、照準はありません。 どこに照準をとるのか?いや、弓道には、「うーん、もっと右かしらん..」とか いう照準の概念がない...みたい。
 でも正しく引けば矢があたる。それは、的までの距離が28mの 1種類しかないから!! これなら動くサイトはいらず、ある1つの照準だけで、あとは 経験さえあれば的を射ることができるでしょう。
--すみません、28mは短的で、他に長い距離の長的という種類があるそうです。 競技で行われるのは短的のようです。

 また、弓道は、「礼に始まり、礼に終わる」で、 そもそも的に矢をあてることが目的ではありません。形にそい、 正しい呼吸で、いかに美しく動作を完了するかの方がずっと重要。
ホームページをみていても、 「いかに的の真ん中にあて高得点を出すか」と、即物的な(笑)アーチェリー HPに対し、弓道HPには、「的のまんなかに当てるには」 なんていう技術論が、まったくといっていいほど、ない!!
 弓を射るにも、立ち方も歩き方の形があり、打つのも「足踏み」 「胴作り」「弓構え」「うち起し」「引き分け」「会」 「離れ」「残心」(アーチェリー経験者なら、だいたい 何のことかわかるよね。)の8つの動作を、呼吸を重視して 1つ1つ行うという....やっぱ武道なんですね。

 ◆弓道のすすめ
とっつき易く、かつ詳しい弓道入門最適サイト!射場の見取り図から 用語説明まで絵つきであるし、リンク集がまたすごい。



☆アーチェリーと弓道:その2

 弓道とアーチェリーの違いをまとめてみると、次のとおりです。
1.的中よりも礼と形・神事・武士の道としての歴史を重んじる弓道に対し、 とにかく的にうまく当てるべく発達してきたのがアーチェリー。
2.照準があるのがアーチェリー、弓道はない。
3.アーチェリーは弓の中央部分にグリップがあるが、和弓は下から1/3の部分に にぎりがある。
4.一応ロングボウから発展したアーチェリーだが、長さは1.6mちょい。 弓道の弓は2m21cmでかなり大きい。
.矢を左につがえるアーチェリーに対し、弓道は矢を右につがえる
.アーチェリーは人差し指と中指で弦をひくが、弓道は親指で引く
7.弓道は騎射を重視するが、アーチェリーはあくまで歩兵の武器。

 このうち、5番6番が、その起源にせまる重大な違いなのです。
  ☆アーチェリーは、矢を左につがえ人差し指と中指で矢をつがえる 地中海型
  ☆弓道は、矢を右につがえ親指で引くモンゴル型
 これは、地上に立って弓を引くか、馬にのって弓をひくか、その違いなのです。

 遠く平安〜室町時代、武士の道のことを「弓馬の道」といったほど、 弓と馬は共にセットになっていた。また、武士が誕生した平安後期なんて、 剣よりも弓術の方がはるかに重視され、弓+馬は神への奉納としても重要だった のであります。

 騎射の起源は、(1)メソポタミア〜イラン、(2)モンゴル〜中国。の どちらかでしょう。あの馬上で振り向きざまに弓を射ている絵「パルティアンショット」の図柄はシルクロードをへて、日本にも伝わっていました。

 日本に弓そのものがいつ伝わったのかしりませんが、上記5,6番がそろっていることから、和弓は、モンゴル型の騎射の弓の伝播ものに相違ありません。
 しかし、日本 オリジナルといえるのが、やたらと長い弓であることと、グリップが 弓の真ん中にないこと。かの正倉院所蔵の日本の最も古い和弓は、 丸木の原始的な梓弓ではありますが、長さが2.4m!ですでにそのころ から世界一長い弓だったのです。

 そののち、内側と外側に竹をはりつけてしなりを強くする弓が登場し、 武士の合戦ではこのタイプが使用されたようです。しかし、 「北条時宗」で出たような本場・蒙古の大きくしなる短弓に比べると、 弓を射るのが遅い、当たらない、やたらでかいので馬上で扱いにくい、 とあんまりよくなかったみたいです。でも、けして和弓の長さは そのあとも縮まらなかった....ものすごいこだわりがあったようです。 これは神に奉納する弓だからなのか、別の理由なのか....


 このモンゴル型の弓、馬と共に生きた騎馬民族の弓は、制約が多いみたいです。 それは一言でいえば、弓手と馬手。 片手は手綱をにぎらなければならない、ということ。広大な平野の戦い がくり広げられる中国では、多彩な武器の中に両手剣はほとんど ありません。それはあたりまえ、片手は手綱をにぎるのですから。

騎乗で弓を射るとき、矢を左につがえると、 このように、馬が前進すると、矢が落っこちてしまいます。 騎射をするためには、必ず矢は弓の右につがえなければ ならないのです。

 モンゴル型の起源は古代メソポタミアか、黄河より古い 長江文明か...。一応、個人的には前者を押したいです(^^;)。 初期はロバを使っていたメソポタミア。数学に天文学、政治学と おつむのよさでは他を圧倒していた彼らが、鉄と馬のエジプト& ヒッタイトにハデに敗れたことから、馬を導入。以来、オリエントの 民は、馬と共にあることになりました。剣をほとんど使わなかった メソポタミア。イシュタルの引く星の弓が、私たちの和弓の起源と つながってたらすてきだな、と思うのデス。

 さてアーチェリーは、森の民族ヨーロッパ人の狩猟の弓が、 戦場用になったようなものです。走る馬の上と違って、右ななめ前からの 風は受けないから、矢はねらいやすく落ちにくい弓の左側、自分の体側に つがえる。手綱をもちなおす必要がないので、引き絞る右手は 力が入りやすい形で人差し指・中指で弦を引く。これが騎射をあまり行わない ヨーロッパの森の弓、地中海型という射法です。
 とても自然な形で射ることができるのが、のんきなアーチェリーの特徴で、 初心者でもすぐマスター、できるわけでして...ええ(^^;)

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 ★最近多い和弓のホームページ。ごくたまにですが、何なんだそりゃ... というような珍説が書かれている。
 たとえば「洋弓は命中率は高いが、射程が短い。 和弓は命中率は低いが100〜200mの長い射程がある。 それは、和弓の握りが弓の中心より下にあるため、自然と矢が上に むかって飛ぶから。」...って、おいっ、アーチェリーも上に向けていれば 飛距離はのびるんだよ、当然ながら(^^;)!また、競技でも90mがあり、名手なら その距離でも的の中央に当てるよ。的なんかどーでもよくて (競技でなく戦争ならそれでOK)、ただただ飛べばいいだけなら、 40kg程度の弓で150mはいくはず。いや、仰角45度で飛ばせば 300mくらいかも....。

 ★騎乗の武者たちは、どちらに向かって矢を放った?
 「鎌倉、室町の合戦では、騎乗し、横ではなく正面に向かって射ったのではないか」 という日本の武士の戦いの新解釈がでてました。
 これはたぶん、真正面ではなく、左ナナメ前という意味でしょう。 個人的意見ですが、それで正しいと思います。 (じゃぱにーずポニーといえど馬はでかいので、 真正面に射ろうとすると、馬の首に弓がぶつかります。)

 騎乗では、左ななめ前方か、左ななめ後方(共に右ききの場合)以外、 敵を正確にねらうための弓は、撃てない。
 つまり、
 ・真正面は、馬の首に弓があたるので打てないし、
 ・真横は、馬のヨコ腹を敵にさらすことになり、戦術的にぺけ!で
 ・右側は、弓を、手綱をもつ馬手側のサイドに用意して、撃つときにそれを弓手に持ち替え、弓手を顔の前を横切るような位置に出し、馬手は手綱を離して弓を引くという、ものすごーく障害の多い(とゆーか、不可能)打ち方なので、だめ.
...といった、理由のためです。

 止まってる馬から射るなら、わざわざ馬の向きをかえて横を敵に向け、 真横に射るより、左ナナメ前方の方がねらいやすかったのでは ないでしょうか。

 しかし、これが馬で走りながら射る...場合は、 今の流鏑馬のように、比較的楽な真横から射ったかもしれません。
 走る馬に落馬しないでのるのは、見た目以上にむずかしいです。 まして、その上で弓を引くなんて!超アクロバットですよ。

 また、弓を引き絞る間は騎手はまったく無防備。さっさと矢をリリース しないと自分の命が危ない。だから楽な真横に射た...のかも。

 オリエントの弓手たちも、ギャロップでの騎射はしなかった... できなかったと思います。ギャロップで手綱を半分放し、さらに弓なんぞ構えることは、 自分の命がなくなる....たとえ名騎手でも落馬まちがいなし。

 こーゆーのは、机の上であーだこーだ言わず、「まず実際にやってみましょう」が 一番デス。

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 今の洋弓はアルミの矢が主流です.これは手で軽く折り曲げられる弱い矢. しかしこれも弓につがえて打てば、初心者用の20kg程度の張力の弓でも, 15mくらい先の薄い鉄板は,軽くぶち抜く力があります.普通はもっと強い (張力の)弓を使うので威力は大きくなります. ねらいも,構え、照準、リリースに至る集中力さえあれば、そんなうまい人じゃ なくてもまず的ははずしません.これも和弓のように、心して使って ほしいものなのです.

 ◆さらに詳しくは以下のページへ
 @-cherry.com




ロード・オブ・ザ・リングの弓
  剣と弓こーなーイチオシの映画その2.(その1は「グラディエーター」)

キングスフィールド4の弓
  剣と弓こーなー初の推薦ゲーム!

★そのた、架空??の有名人?たちの弓
◇絵美子氏---シルクロードシリーズの神坂智子の初期作品「絵美子かぞえ唄」のヒロイン。1977年。 これは弓道もので、弓道が添え物ではなくメインテーマで扱われている。 25年も前に描かれた絵美子ちゃんの華麗な立射を、以下の皆さんは見習おう!

◇天空の当麻氏---当麻氏は、LOTRのレゴラス級に、そのアニメ中で人気があったため、 そのとんでもない弓の引き方はよく話題になった。最大の問題は、洋弓、和弓ともに 非常にまずい「体が正面むいたまま、弓をひいてる」点である。やってみるとわかるが、 フルに引けないので、矢が飛ばない。これがまたバンクで、毎度毎度でてくるもので、 気になってしかたがない。この当麻くんの弓をいる場面を、アーチェリーベースの 見事なフォームで書き直してくれた、みずき健氏の同人作品があり、おすすめ。  ただ、このアニメ作品中では、当麻氏の弓は主に「なぐる」 用途に使われていたので、あんまり問題なかったかもしれない。

◇平勝真氏--この人、つい最近の作品なのに、当麻と同レベルなんだもん! 平安時代に洋弓ひいてる点なんかどうでもよくなるくらい、正面むいて さらに腰を落として弓をひいてるのが、気になる....。 イラストはまちがってないところから、おそらくアニメ屋の方に問題が....。






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